this week practice

2001.July28

Economy? 

or 

Environment?

地球温暖化をめぐる各国の議論

 

Please allow me to explain the backgrounder in Japanese.  To focus on the debate closely and to help understand the complicated and turbulent subject well, I introduced the backgrounder in Japanese.

Instead of presenting the backgrounder in Japanese, I attached the word list concerning today’s topic at the end of this document.

 

 1995年11月29日。深夜。スペイン・マドリッドのはずれの国際会議場。扉の向こうから拍手の音が響き、重たい樫の木の扉が開くと、上気した顔の人々が次々と吐き出されてくる。多くの人に握手を求められ、肩をたたかれながら最後に部屋を出てきた白髪の紳士が、スウェーデンの地球科学者で、議長のバート・ボリン博士だった。

 「地球の気候に関する人間の影響を定量化しようとの我々の能力は、現在のところ限られたものである。にもかかわらず、さまざまな証拠を勘案すると、地球の気候に対する検出可能な人間の影響が存在することが示唆される

 世界の一線の科学者が、人間活動の結果としての地球温暖化がすでに始まっているとの結論をまとめた瞬間だった。

 

科学が示す事実

 1988年11月。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が設立された。これは温暖化に関する科学的な成果を評価するために、千人以上の科学者や行政官で構成された世界的な組織で、温暖化に関する科学の最高機関である。IPCCは報告書で、「現在のままのペースで温室効果ガスの排出が進んだ場合、地球の温度は2100年には3度高くなる。海面は2100年までに65cm高くなる」と述べた。報告書はまた、「現在の排出量の安定化(現在の排出量を維持すること)では大気中の濃度の増加が続く」と指摘。

 つまり、気候変動枠組み条約が定める「90年レベルでの排出の安定化」という努力目標では、大気中の二酸化炭素の濃度は安定化できず、「温室効果による被害の防止」という条約の究極の目標を達成するには不十分だ、と指摘したのである。

 

 

京都会議までの各国の主張

 科学が示す強烈なメッセージを受けて、各国首脳は温暖化防止に向けて白熱した議論を交わすようになる。しかしその議論は、次第に本来の目的を忘れていくことになる。

 EU。積極派。「もし温暖化の脅威が現実のものとなったら、被害はとてつもなく大きく、取り返しがつかないものだから、今のうちに十分な対策を取っておく必要がある。科学的に分かっていない部分があることを、行動を取らないことの理由にすべきではない」(これを「予防原則」という)

 米国。消極派。「温暖化対策のコストはかなり大きなものになる。もし多大なコストを掛けて対策を取っても、科学的な前提が誤っていたら、現代の世代に過大な負担を負わせることになる。科学的な評価が定まらないのだから、当面はエネルギー効率の向上や省エネなど、経済的に引き合う対策だけを徐々に進めている方が正しい」(これを「ノンリグレットポリシー」、「後悔しない政策」という)

 日本。曖昧派。1990年度比で6%から8%の削減は可能だとする環境庁(現在の環境省)と、どんなにがんばっても90年レベルでの安定化以上は困難だとする通産省(現在の経済産業省)との意見が対立。「省あれど国家なし」ここでも国としての明確な姿勢を示せず、各国から批判を浴びる情けない日本の姿があった。

 途上国。正統派。「先進国の排出は贅沢のためのもの。われわれ途上国の排出は人々の生存に関わるものだ」「温暖化は先進国が引き起こした問題だ」と主張。また同時に「発展のための排出の権利」を求めた。

 

京都議定書誕生

 1997年12月11日午前10時15分。ついに歴史的な瞬間が訪れた。京都議定書の誕生である。

 米国がドラスティックで柔軟的な動きを取って会議をリードし、議定書は完成した。結局「2008年から12年までの平均で90年度レベルから、EU8%、米国7%、日本6%削減、途上国は見送り」という形の議定書となった。しかし、その裏にはさまざまな「抜け穴」とでも言うべき「柔軟性事項」があったことを忘れてはならない。(柔軟性事項については、これだけでもかなり大変な議論になるので、今回はやめておきます)

 

 地球は人類のためにあるのではない。愚かなものはやがて滅びる…。

 

 

 

 

 

 

 

Vocabulary

京都議定書         Kyoto protocol

批准する                  ratify

地球温暖化         global warming, greenhouse effect

軽減する                  reduce

先進国           advanced country, leading country

発展途上国         developing country

贅沢な           lavish, luxury

質素な           abstemious, frugal, modest

被害者           victim

環境問題                  environmental concerns, environmental problem

矛盾             conflict, contradiction, discrepancy

禁止する                  ban, prohibit

 

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